スペイン語通訳・翻訳 スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国。
金沢市の北國外国語カレッジを中心に、スペインの生活とスペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでつながりながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとして、ますます活動の幅を広げていくべく、挑戦中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

遠出? いやいや、ただの里帰りです! …そしてAOVE! ①

スペイン人の友人たちに日本のことを尋ねると、
ハポン(JAPÓN)=ニッポン=トウキョウ、キョウト、オオサカ。
日本の友人たちにスペインのことを尋ねると、
スペイン=エスパーニャ=マドリード、バルセロナ、セビリア。

おっと、そこまで知っていれば十分です! だって、それ以上を知るには、そこに行かなきゃ絶対にわからないんですから!

バルセロナに里帰りするたびに、バルセロナ近郊に住む友人とは、必ず会うし、彼らが日本に来るたびに金沢に遊びに来てくれます。カナザワ? この地方都市を知っているスペイン人は、そんなにたくさんいないので、ここぞとばかりにご案内です。おかげで、私の友人たちは、日本の町というと、金沢がトップスリーに入ります。新コロナ禍の中、どの国も国外への移動が制限され、国内での移動になります。取材もできない中、困っていたところ、毎年金沢に遊びに来てくれるヒデから、「今回バカシオネス(vacaciones=vacation=休暇)で、ラファの故郷を旅行するんだ。アンダルシアの小さな村なんだけれど、写真を送るよ」という申し出を受けたのです! ということで、日本からはなかなか行けない町をご紹介することにしますね。

長野の高原野菜、レタス。北海道の魚介。千葉県の落花生。金沢の和菓子。などなど、様々な地方には、それぞれ有名な産物があります。また、日本はどこに行っても、お米どころ。美味しいお米があるところには、美味しい日本酒があるものです。彼らの故郷にも有名な産物があります。そう、オリーブオイルです!

ハエン(Jaén)と言う県が、スペイン南部、アンダルシア地方にあります。そうです。白い家々の連なる、年中温暖なイメージのスペインの南の地方。有名な地名にグラナダ、セビリア、コルドバがありますが、その中でも内陸部、どちらかというと地中海の近くに位置し、グラナダとコルドバに接しています。

ハエン県に入ると、左右どちらを見てもオリーブ畑が続く。雨が少なく、朝晩の気温差の激しい内陸部だからこそ生育するのか

時間制約にあったり、荷物の移動が大変だったり、ということで、筆者はほとんど車移動で旅をして来ました。車窓からの景色がだんだん変わっていく様子は、本当にワクワクしたものです。オレンジ畑が地平線まで続いていたり、緑色の葉っぱの中から白や赤のブドウがのぞき、山の麓までうねうねと続いていたり、そして今日ご紹介するのがオリーブの木の景色です。どこまでも、どこまでも整列して続いていくオリーブ畑(オリーブの森と呼ぶには、低木すぎる気がするのは気のせいかしら?)は見ていて飽きない。なんにもない景色のようでいて、見えるのはオリーブのみ。そして、地域の一番重要な産業なのです。

見渡す限りのオリーブ畑は圧巻

何しろ、オリーブのない区画はどこにもない、というぐらい、オリーブ、オリーブ、オリーブ。ハエン県のオリーブの実の生産量は、ダントツ。オリーブの実(もちろん木も)の種類で、世界中で一番栽培されているのは、Picual(ピクアル)ですが、なぜ世界一か、想像つきますか? それはなんと、ハエン県で主に栽培されているのがPicualで、だからPicualが世界で一番栽培量の多いオリーブ。つまり、それだけこのハエン県でのオリーブ生産量は突出しているのです。ハエンが世界のオリーブオイル生産の要であることは、間違いありません。

そのオリーブオイルの産地でも有名なCazorla(カソルラ)村から1キロほどに位置する、人口1900人ほどのLa Iruela(ラ・イルエラ)村に、友人の実家があり、窓からはお城が見えます。これは、Orden de los Templarios(日本語ではテンプル騎士団)の城の一つで、「Castillo de La Iruela(カスティーリョ・デ・ラ・イルエラ城)」と言います。

Castillo de La Iruela(カスティーリョ・デ・ラ・イルエラ城)が見える実家へ、久々の里帰り。素敵な幼年時代を過ごしたのだろう。羨ましい限りだ

この村は、スペイン最大(ヨーロッパでは二番目)の自然公園El Parque Natural de Cazorla, Segura y Las Villas(パルケ・ナトゥラル・デ・カソルラ・セグーラ・イ・ラス・ビリャス)に隣接し、1983年にはUNESCOの生物圏保護区に、1986年には自然公園、1987年には鳥類の特別保護区にも指定されています。この公園周囲には23の自治区があり、それぞれの自治体がこの公園を利用して経済活動を行なっているとのこと。自然の中を歩く、鳥を観察する、滝や洞窟の散策などの活動は、こんな自然の中では素晴らしい体験となるでしょう。

大自然の真ん中。朝晩と日中の気温の変化が大きい

ただ、やはり問題も出て来ていて、400人が利用できるだけの水量しか浄水できない浄化装置は、週末になるとその10倍の水の需要があったり、毎年問題になる山火事(必ずしも人災だけではなく、自然発火もあるようですが)の発生であったり、道路で轢かれてしまう動物、密漁など、解決策を練るのが大変のようです。

れっきとしたボカディージョ。銀紙に包んで、フルーツと一緒に持参

先月号のボカディージョ(サンドイッチ)の記事を見たラファが、「遅かったか!」と送ってくれたのが、この写真。

「なんだろう、トルティージャ(オムレツ)とフランクフルトソーセージ?」と答えると、「違うよ〜!」と不満げ。電車の旅の時間潰しがてら、レシピを教えてくれました。「ゆで卵を作る。それに緑の苦みのあるオリーブを細かく刻んで、バージンエクストラオリーブオイルを絡めるんだ。うちでも以前、オリーブのサラダを食べたでしょ?」
そうでした、そうでした。やけにオリーブをたくさん使うなぁ、と思っていました。ただ、高血圧持ちの筆者、オリーブはそんなにたくさん食べないので、失念していました。すみません。

そこで今月の題材が「AOVE=Aceite de Oliva Virgen Extra(エクストラバージンオリーブオイル)の略」なのです。

赤い。スイカのようなテクスチャーだが、タネにしては異様に大きい。いえいえ、タネではなく、黒と緑のオリーブ

実家に到着、早速お母さんの手料理に舌鼓を打っている様子。

「これは、RIN RAN(リン・ラン)という料理さ。郷土料理なんだ。早速母が作ってくれたよ」と。
異国の文化を知るには、胃袋から、と思っているので、作り方も説明しますね。
「材料は、ジャガイモ、緑と黒のオリーブ、玉ねぎ。塩抜きした塩タラの細かく切ったものに、乾燥チョリソ赤ピーマン(赤いピーマンですが、唐辛子の一種。カイエンペッパーの原料のようなものと考えていただきたい。チョリソが赤いのは、このカイエンペッパーが含まれているから。だからこの日本語訳)、そしてもちろん、AOVEさ!」
「ジャガイモとトマト?」 時差のため、この画像が送られて来たのが早朝で、寝起きの筆者はちんぷんかんぷんなことを聞いてしまいました。「NO!!!!! トマトじゃないよ! 赤いのは、チョリソ赤ピーマンの色だよ」と。

口当たりはピューレ(マッシュポテトかな)に近いが、味は絶妙。何しろ塩タラが入っているし、もちろんAOVE! 赤い色は、ジャガイモを茹でる時に、乾燥チョリソ赤ピーマンも一緒に茹でるからだそう。それ以外は、すべて生で。夏にぴったりな、口当たりが良さそうな一品ですね。

翌日は市場への買い物を兼ねての散歩。村から一キロメートルの隣町、Cazorla(カソルラ)まで歩きます。みなさんのイメージ通り、壁は白く、石畳、道は細くて散歩には格好のようです。これがアンダルシア地方の一つの村。こういう素敵な村が、観光地に行かなくても散在しているのです。「うううん、早く規制が解けて、旅行に行きたい〜」という気持ちで、ワクワクして来ます。

散歩途中の町の様子。Palza del huevo(プラサ・デル・ウエボ=玉子の広場)には、市役所もある。
この日はそんなに青空ではないものの、車も少なく、のんびり感満載

町には大きな広場に噴水、重厚な建物、教会、役場が立ち並びます。また、時折、草の陰った涼しげな建物があります。雑草が侵食したわけではありません。これ、ブドウの木なのです。畑に植えられるブドウ畑(Vid=ビッ=ブドウの木)のブドウは、ワインに使われますが、この家に植えられているものはParra(パーラ=ブドウの木)と呼ばれ、ブドウは食用にします。一本のブドウの木を大きくして、正面ファサードに這わせ、影を作るのです。窓から手を伸ばせばブドウが取れるなんて、楽しそうですね。
さて、市場に到着。色とりどりのフルーツが嬉しくなってしまいます。ここアンダルシア地方は、路地、ハウスを含めて、野菜や果物の栽培も盛んです。この市場で売られているものは、ほとんどが地元の人の栽培したもの。ほとんどの住人が畑を持っているとのこと。もちろん、価格も魅力的で、毎日フルーツがおなかいっぱい食べられます。

八百屋の店先に吊るされているチョリソ赤ピーマン。魚屋さんでは量り売りで購入。マラガ産のイワシとウエルバ産のカタクチイワシ。輪っか状態で吊るされているのが腸詰めの一種

カタクチイワシなどの青魚は、アンダルシア近郊で水揚げされます。今日は、Cádiz(カディス)産と、Huelva(ウエルバ)産の二種類を購入。早速お母さんが料理してくれたそうで、それは次の機会にご紹介しますね。

ということで、歴史の話と思いきや、最後はやはり食べ物で締めくくってしまいました。

今月のワンフレーズは、
¡A disfrutar de las vacaciones! (ア・ディスフルタール・デ・ラス・バカシオネス)「休暇を楽しんでね!」

今月もお読みいただきありがとうございました。
AOVEをこよなくLOVEするこの地方の情報は、またの機会に続編を考えていますので、お楽しみに!

≪取材・写真協力≫
Hide Tsutsumi氏
Rafael Angel Castillo Vico氏