スペイン語通訳・翻訳 スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナでの滞在 27 年を経て、2015 年に...もっと見る スペイン・バルセロナでの滞在 27 年を経て、2015 年に実家のある金沢市に移住。日本三名園の一つ、兼六園で観光ガイドをするかたわら、地域の方々にスペインの魅力を語り、「故郷」バルセロナとのつながりも大切に、翻訳通訳だけでなく、ステレオタイプに縛られない、多方面での活動を模索中。現在、北國外国語カレッジを中心に、受講生のニーズに合わせたスペイン語のクラスを受け持つ。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

外出禁止(Confinamiento)をめぐる、市民の風刺

とうとう、このコラムでも今回の新型コロナウイルス(COVID-19)について書く決心がつきました。このコラムが出る時期に、日本の自粛が終了していることを想像し、長い長い不安な生活の後に待っているであろう、楽しい様子を想像して書くことにしますね。

スペインの外出禁止令が出たのは3月上旬。バルセロナの友人が毎日欠かさず更新するFacebookに行き、日時を確認。やはり、3月11日に外出禁止令となり、子供たちの学校は休校。そしてその親たちも家にいなければならなくなりました。つまり、3月12日が、外出禁止(Confinamiento、長いスペイン生活で初めて聞いた言葉です)1日目、となったのです。

サルバドールが考えたボードゲーム。長い自宅待機が始まるため。
消毒、自宅待機、病院、罹患、サイコロの数によって進んだり、戻ったり。最終地点は、天またはワクチン

スペインでは、「自宅待機へのご招待」ではなく、「自宅からの外出禁止」というかなり厳しいものでした。出かけて良いのはスーパーや薬局。当時はクリーニング店も美容室も「不要不急ではない」業種ということで、閉店には至らなかったのです。クリーニングは生活において身の回りの清潔さを保つ、という観点から。美容室も同じです。

当初、何をすればいいのかわからず、まずはイラスト入りでCOVID-19対策。太陽はビタミンD、マスクに手袋、手を洗ってうがいして、と、これは万国共通のよう

スペインも、日本と同じく長寿国です。たくさんの高齢者が暮らしていますが、美容室は特段おしゃれだけのためではないのです。年をとると腕が上がらなくなり、髪を洗うのにも、髪型を整えるのにも支障が出ます。なので、定期的に美容室に行き、シャンプーセットをしてもらうお年寄りがかなりたくさんいらっしゃるのです。もし美容室が閉まってしまうと、困ってしまう人々がいるわけですね。カラーやパーマは我慢できてもシャンプーセットは我慢できませんよね。

日に何度も散歩に連れて行かれ、疲れ果ててしまった犬の代わりに、亀を連れて行こうとするも、「いやだ。冬眠する」と言われている若者

それ以外に、犬の散歩は許可されていて、私は家族同様の大家さん家族のフラッシュという犬のことを心配したものです。犬の散歩、だいたい1日3回ぐらいでしょうか? 朝晩2回というお家もあるでしょうね。それが、ここで「犬の散歩は許可」ということで、お隣のチャイムを鳴らし「ねえねえ、おたくのワンちゃんの散歩、させてくれないかしら?」なんてことも十分あり得ることだからです。ヘトヘトになってしまうワンちゃんを想像して、ゾッとしたものです。ただ、この保護犬フラッシュは大の散歩好き。お散歩は一回軽く15キロということもありました。飼い主も大の歩き好き。休日には「今日はバルセロネッタの海まで行ってきたよ」なんてことも度々。もし私がまだバルセロナに住んでいたとしたら、一度はフラッシュを借りて散歩に出たでしょうね。その辺りはどうやってコントロールしていたのでしょうか。

毎朝の日課が、買い物カートを抱えてのお買い物。だけれど、市場に入るのにも長い列。そんなに毎日買うものもなく、外出できても、それが苦痛になってきている絵

買い物も許可されていたので、スーパーに行列ができたのも有名な話です。で、外出のたびに買い物していれば、そのうち買うものもなくなるというもの。いたちごっこ、ということで、なんと、家を出るときにすでに新品のスパゲティとか缶詰とか、洗剤などをマイバッグに詰めて、買い物客を装う猛者まで登場したのです。日本では、外出自粛をお願いする行政の職員がプラカードで町に出ましたが、バルセロナの場合は警察が出動です。違反者にはバシバシと違反切符を切る、という強硬手段。この猛者たちも当然職務質問されます。

「ジョゼップ、もう今日は出かけないで、少し休んで!」「いやあ、犬が逃げ出してしまって…」と言う夫婦の会話には、多くのパンが。パンを買いに出る、と言うのは許されていたため、食べきれないパンが

多分、1日目は大目に見ていたのでしょうが、あまりの「買い物客装い」の違反者が多いので、買い物客はレシートの保管が義務付けられ、本当に買い物帰りなのかどうか、という確認も行われたということです。確かに、レシートには日付と時間が記載されていますからね。

最初は、ほとんどの友達が家の片付けをしている、と言っていたのですが、この辺りでは何時に友達に電話をしても、必ず会話を楽しむことができました。みんな家の中でする事がなくなってしまい、職場とのテレミーティング、家族との日々の会話に飽きてしまい、日本からの情報が新鮮でもあったのでしょう。日本は、まだ非常事態宣言を出せる状態ではなかったのです。そりゃあ、羨ましがられました。

マスクはあまりポピュラーではないヨーロッパ。せっかくマスクが流行るなら、と、いろいろなデザインをするサルバドール。
もちろん、自身もいろんなアイテムを加え、試着。
鉛筆を耳にかけ、イラスト作成に勤しむ

玄関で靴を脱ぐ習慣も、新しいもの。
籠の中には外履きを、家の中では内履きを。スリッパじゃなくて、やっぱり靴なのがとってもヨーロッパなのか?

4月12日は、第32日。4月20日で第40日。ここで、外出禁止令が終わってくれればな、と、すべての国民が望んだのです。「検疫」という言葉は、スペイン語ではcuarentena(クアレンテーナ)、これはイタリア語派生の「40日の間」という意味で、人や動物を隔離して病気などが発症しないか、という確認に要する日数なのです。日本語で「検疫」というと、そんな長い間の隔離は想像できず、ただの検査のように思われますが、他の言語では40日という期間であることが普通に想像できます。

4月28日に、サンチェス首相が規制緩和を発表。なんと、外出禁止令から48日経っていました。そして実際に始まったのが5月2日。まさに、日本のゴールデンウィークの後半です。ただし、4月26日以降には14歳未満の子供の散歩が許可されています。

さあ、PCR検査、列を作れ、次は君の番だ、さあ、ボールを受けよ

外出禁止の時は、家で楽しく遊んでいたのが、いざ部分解除されると散歩もそんなに楽しくないな〜

ソーシャルディスタンスを測るための発明。使わないときには足の部分が折れる。もちろん、男女兼用

イースターには、子供の後継人(Padrinos=俗にゴッドファーザーと訳される)がモナというケーキをプレゼントするが、今年は外出禁止のために会うことがままならず、子供は「ケーキ食べられるんだろうか?」という素朴な疑問を持った

外出許可は、年齢によってグループ化され14歳まで、14歳以上、要介護者と70歳以上に分けられました。14歳以上の個人的なスポーツまたは散歩で、散歩は住居から1キロ以内。スポーツは、同市町村内に移動可能。ただし、個人競技である事。また、スポーツスペースへの移動にはモーター付き乗り物も公共交通機関も使用できない、という但し書きがあります。だんだんややこしくなってきました。じゃあ、自転車は大丈夫なのかな?

そして、各グループの外出時間もきちんと定められています。6時から10時、20時から23時が14歳以上。要介護者と70歳以上の高齢者は10時から12時、19時から20時。14歳以下の子どもたちは12時から17時。これは、町の人口にも左右されるけれど、基本1日1回となります。去年の夏のバルセロナ里帰りの時も、大家のマリアは毎朝市場に買い物に行って、そこで友達とテラスに座ってコーヒーとサンドイッチの朝食食べて、おしゃべりに花を咲かせていたけれど、まだ散歩に留まり、バルもレストランも開業していないんだろうなと思ったら、ちょっと悲しくなります。マリア、足が痛いって言っていたので、散歩はできるかな〜。

COVID-19は熱に弱いとのことで、水温を上昇させ滅菌し、海水浴禁止にならないようシステムを構築する、というサルバドールの発明。日本の海や山もこれで楽しめるのか?

筆者も自宅で書き物をしながら、たまにバルセロナの友人たちにメッセージを送っています。「いやぁ、2日前から外出許可になったけれど、まだ出かけていないんだ」という答えも返ってきました。50日も家にいると、自宅にいることが楽しくて面倒になったのかな、外出が? また、別の自転車好き友人はFacebookで「あ、自転車で散歩しようと思ったけれど、寝過ごしてしまった。まあいいか、室内用の自転車をネットで買ったから」なんてこともつぶやいていました。

さて、昔と同じ生活に戻れるか、否か? 微妙な感じですね。バルセロナで見たとこのないマスク姿の人々が増えて、会った時と、じゃあねって別れる際にほっぺにするdos besos(ドス・ベソス=キス二回)、暖かいハグ。出来なくなってしまうのかしら?

ということで、今日は、「新コロナ撲滅達成」で祝杯を上げているであろう、1ヶ月先を夢見てこのコラムを書いています。そして、緊迫している厳しい状況を打開しようと、このconfinamientoを風刺イラストで表現した作品の数々をお届けしますね。アーティストは、いつも写真を提供してくれるSalvador(ペンネームはVinyatti)。外出禁止令で撮影に出れなかったので、カメラを絵筆に代えての登場です。お楽しみいただけましたでしょうか。

今月のワンフレーズは、
¡Por fin! (ポル・フィン)「やっと!」

やっと外出できましたね。でも、まだまだ油断は禁物です。みなさんご自愛してくださいませ!