スペイン語通訳・翻訳 スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国。
金沢市の北國外国語カレッジを中心に、スペインの生活とスペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでつながりながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとして、ますます活動の幅を広げていくべく、挑戦中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

「ねえねえ、スペインって物価安いの?」

「家族四人、どれぐらいで食べていけるの?」

などなど、質問されることがあります。うううん、難しい質問ですね。

物価、安いの? 高いの?

まず、IVA (Impuesto sobre el Valor Añadido、付加価値税)と呼ばれる、消費税のような税金が 21 パーセントのスペインは、決して物価が安いイメージではありません。もちろん、日常の食料品、医療品などには 21 パーセントはかからず、10%、4% と、品目によって課税のパーセンテージは変わって来ます。日本で 10 月から施行される、と言われている 10% の消費税が、持ち帰りかその場で食べるかによって変わる、という件が話し合われていますが、スペインの税金もそれなりにややこしいのが実情です。

 

ただ、スーパーなどでの表記は、内税が多く、すでに税金を加えた額が表示されているのが普通です。たいていの場合、払った数パーセントかの税金は、よほどのことがない限り、戻ってくることはないので、税金は、安ければ安いほど、ありがたいのは庶民の気持ちですよね。

 

そんな中、スペイン人たちはどう過ごしているのか、と興味が湧くことと思いますが、基本的な物の価格は、そんなに高くないのが実情です。例えば、毎日食べるパンやお米、どれぐらいなのでしょう?  気になりますよね。

それが、この写真です。

 

今、1€ が 126 円ほどなので、大体の価格がつかめると思います。

対面方式から、自分で取る形になりつつあるスーパーのパン売り場。 朝、昼、晩と何かと食べるものだから、価格もお財布に優しい(写真協力 © Salvador Barrau Viñas)
左:スーパーのフラスンパン一本、約 250 グラムが 0.55 ユーロ = 70 円ほど。 毎日食べるものだから(写真協力 © Salvador Barrau Viñas) 右:こだわりのあるパン屋さんでは、パブェ(敷石型のパン)、パジェス(田舎パン)などもある。 価格は若干上がる(写真協力 © Salvador Barrau Viñas)

スペインでは、「バーラ(Barra)」と一般的に呼ばれる長細のフランスパンが主食で、朝食ではトーストにし、昼食、夕食ではメインディシュとともに欠かせず、そしてお弁当として持ち運ぶ Bocadillo(ボカディーリョ)もこのパンを使いますので、その消費量は日本の比ではありませんね。おのずと、価格競争も起こるわけです。

 

では、それ以外の主食、お米はどうでしょうか?  パエリアという、バレンシア発祥のお米料理が有名ですし、それ以外にもサラダに入れたり、メインデッシュの付け合わせになったり、また、Arroz con leche(アロス・コン・レチェ、お米とミルクの意味。日本ではミルクがゆ、ライスプディング)というデザートにもなる、生活に密着したものですね。

 

ただ、スペインでは白米をお茶碗に入れて食べるスタイルはないので、「新米が美味しい」というコンセプトもあまりありません。白いご飯は大抵肉や魚のソースと混ぜられたり、醤油を直接白いご飯にかけて食べる、という、ちょっと驚きの食べ方をする人もいます。もちろん、「ご飯にお醤油はかけないのよ」とコメントしますが、お醤油味は好まれます。ですので、一般の家庭で購入する場合は、500 グラム、1 キロという少量パックが主流です。日本のように 10 キロのお米が売られることはほとんどありません。やはりそれだけ、パンが主流なのですね。

 

友人にパン屋さんがいます。バルセロナからはちょっと離れている、El Vendrell という街。世界的チェロ奏者パブロ・ガザルスの生まれた町です。いろんなパンが作り出されているこのパン屋さん、生地にもこだわりますが、お惣菜パンが最高に美味しいのです。(https://www.facebook.com/calbadejo/

 

ちょっと遠くて行けない、という方、せめて写真だけでも見てみてください。

スーパーで売られているお米。 一パック 1 キロ入りが主流で、価格は 100 円ほど(写真協力 © Salvador Barrau Viñas)

コシヒカリ以外に、ゆめみずほ、ひゃくまん穀、能登ひかり、ほほほの穂が石川県で栽培されています。それぞれの粒に特徴があり、味や粘り気など、多彩です。日本には一体、何種類のお米が存在するんでしょうか?

 

スペインにももちろんお米の種類はありますし、お寿司に適した日本米も地中海側に位置するエブロ川のデルタ地域で栽培されたりしていますし、フランス南部のカマルグ地方もお米の産地です。だいたい、普通の丸い粒のお米、長くて少し透き通っている長いお米、また香りの強いバスマティがスーパーに並び、様々な料理に利用されます。それとともに玄米やキノアなども同じ棚に並ぶようになり、様々な栄養素を取り入れた、多国籍な料理が食卓に並ぶようになりました。

 

30 年前に製本の学校で一緒に学んだ女性は、「私は毎日同じものを食べることはないの。素材や味付けなど、いろんなものにトライするから毎日違うの。でも、夫は違うわ。一週間、それぞれの曜日に食べるものが決まっていてね。七種類の昼食、七種類の夕食がずっと続くの。飽きちゃうだろうって、私はゾッとするけれど、彼は彼、私は私よ」と言っていました。それくらい、クラシックな家庭がたくさんあったのは、多分、日本も同じなのでしょう。それが、今は、国を出ずに、他国のお料理が廉価で食べられる世の中になりました。そして、30 年前のその友人は、当時日本食レストランが 4 軒しかなく、食材店も少なかったあの頃(スペインの知られざる文化 No.21「何が食べたい? お寿司? 焼き鳥?」)に、すでにテリヤキの存在を知っていた人なのです。

お米のサラダ。薪の暖炉で焼くパンはまた格別

スペインのパエリアはすでに周知とは思いますが、アロス・ア・ラ・クバーナ(Arroz a la cubana キューバ風米料理)も有名です。これは、茹でた白米をお皿に乗せ、その上にトマトソース、目玉焼きが添えられ、食べる時にはそれらを各自が混ぜ合わせるのです。

 

今日は、食の基本、パンとお米の価格を見てみました。一概に、この二つの品で物価が高いか安いか、の判断はつきかねますが、主食の価格はそんなに高くはないようですね。それとともに、お料理の話もしてしまいました。食事前の方々、お腹が「グググ」と鳴ってしまったかしら?

 

この時期たけなわの「ねぎ焼き」の記事は、バックナンバーをご覧ください。(スペインの知られざる文化 No.4「冬のグルメ、冬の風物詩」

¡Qué venga ya la primavera! (ケ・ベンガ・ヤー・ラ・プリマベーラ)

春よ早くやってきて!