スペイン語通訳・翻訳 スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国。
金沢市の北國外国語カレッジを中心に、スペインの生活とスペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでつながりながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとして、ますます活動の幅を広げていくべく、挑戦中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

日本料理がバルセロナで大変ポピュラーになったのは、かれこれ 15 年も前のことでしょうか? それとも 20 年? 気がつくと、街のいたるところに「Restaurante japonés」(レスタウランテ・ハポネス=日本レストラン)という看板が目立つようになりました。

何が食べたい? お寿司? 焼き鳥?

2018年、石を投げれば

「Restaurante Japonés」「Sushi」

という看板に当たる

(写真協力 © Salvador Barrau Viñas)

今から 30 年前、1988 年にはバルセロナに日本料理のレストランは 4 軒しかなかったのです。4 軒全てが日本人オーナーで、そこに行けば「日本」があったし、お金の無い学生時代に清水の舞台から飛び降りるが如く、「日本を感じに」出かけた思い出があります。

 

その後 12 軒に増えた、20 軒になったと、まだまだ日本レストランの数は、指で数えることができたものです。それが 2018 年、気がつくと日本料理と名の付いたレストランは町のあちこちに見られるほどの増殖ぶりです。30 年前にバルセロナの街角で見たもののトップ 3 に、薬局、靴屋、銀行の支店だったのが、今では銀行が消え、日本料理と名のついたレストランが入るようになりました。

さて、「日本料理レストラン」とはなんぞや?

 

日本で食事に行くときに、「今日はフレンチにしよう」とか、「私はイタリアンがいいわ」、「タパスバーにしよう」などと言いますが、これは「外来のものを食べるとき」ですよね。でも、日本にいる私たちは、和食を食べるときに、「日本料理に行こう」とはまず言わないでしょう。「今日はお寿司が食べたいわね」とか、「たまには焼き鳥で一杯いきたいね」や、「天ぷらにしようか」。はたまた、「今日はコシのあるお蕎麦が食べたいね」などと、食べたいものを絞って、「お寿司屋さん」「焼き鳥屋さん」「天ぷら屋さん」「お蕎麦屋さん」と行き先を決めるのが普通ですよね。

 

それが、スペインでは日本食は外来料理なので、もちろん以下のようなことが起きます。日本料理レストランに入ると、お寿司も、天ぷらも、焼き鳥も、うどんも、餃子も、はたまたお好み焼きも食べることができるのです!  これはある種、ショッピングセンターのフードコートのようでもあります。

奥のスクリーンには紅葉期の富士山。 提灯が下がり、竹林をイメージ。 外国人から見た日本のイメージなのか? (写真協力 © Salvador Barrau Viñas)

30 年前に 4 軒しかなかった時代でさえ、「寿司」をメインとしたところもあったのですが、その時代にお魚を生で食する「寿司」「刺身」はまだ一般に受け入れてはもらえていなかったため、「えええ?  日本人?  日本人ってなんでも生で食べるんでしょ?」なんて今なら「偏見だ」、とスペイン人さえも怒るようなコメントが飛び交っていたものです。

メニューの表紙には着物姿の女性が。 エキゾチックな日本のイメージ (写真協力 © Salvador Barrau Viñas)

そんな中、お寿司以外のアンチナマモノの人々が食べられるメニューというため、同時にすき焼きも、焼き鳥も、天ぷらも食べることができるようになったのでしょう。スペインで日本料理レストランを検索するために一番利用されている comerjapones.com をのぞいてみると、バルセロナだけでも 140 以上の日本食を扱うレストランが掲載されています。この驚異的な成長ぶり、さすが世界遺産となった「和食」。なんでも、日本の食文化がなくならずに、継承されていくようにと、世界遺産に登録されたのだそうです。

ここまで来て、海外では日本食ブームに火がついている、とお分かりいただけたと思いますが、実は、もう少し違って来ている部分もあるのです。

 

日本人のフランス料理シェフ、日本人の中華料理人、日本人のスペイン料理シェフ、などなど、人種と作る料理というのは必ずしも一致しないので、別にどこの国の人が日本料理を提供しようが、全然関係はないのですが、気になるのはその内容です。多分、その道のプロたちは、現地に出向いての修行、もしくは日本で正しくその国の料理の修行をし、切磋琢磨して看板を立てているのですが、最近のバルセロナの「Restaurante japonés」少々様子が違います。「あれ?  トムヤムクンスープって、日本料理だっけ?」

何にでも「japonés」や「Japón」をつければいいと思っている感も少々ありだが・・・ (写真協力 © Salvador Barrau Viñas)
定食一人前で 4 皿。残した場合 5€ の追徴。 お持ち帰りはできません、とある (写真協力 © Salvador Barrau Viñas)

現地スペイン料理のレストランやバルに行くと、お昼は大抵「本日の定食」というメニューが存在します。30 年前は前菜、一品目、メイン、デザート、パン、飲み物のフルコースで 380 ペセタから 450 ペセタ(当時で約 350-400 円ほどだったと記憶しています)でいただくことができましたが、最近は 10 から 14 ユーロ(おおよそ 1500-1700 円)となり、前菜はなくなり一品目、メイン、そしてデザート、パン、飲み物のコースへと変わっていきました。システムとしては、それぞれ 3-4 品の中から好きなプレートを選択し、飲み物もミネラルウォーターに始まりビール、ワイン、かなり自由な選択ができます。ワインはテーブルワインが瓶ごと出てくる場合もあり、お酒好きには天国のような昼食です。

そうです。この習慣を利用して一品目に「トムヤムクンスープ」も登場してしまうのです。また、ご想像通り、経営者も日本人でないことが少なくありません。

 

それにしても、カリフォルニアロールを始めとして、様々なお寿司を見事に作って提供し、そんなに高くもなく「日本料理」を広めてくれているという意味では、感謝すべきなのでしょうか。

フュージョンと書かれているので、 なまじ間違っているとは言えない。 おしぼりもなかなか良い (写真協力 © Salvador Barrau Viñas)

色々な意見がユーザー側からも、店主側からも出てくることと思いますが、要は、この 140 件以上ある「日本料理店」から自分のお気に入り、ご贔屓のレストランを見つければ良いわけで、自分好みのレストランが、良いレストラン、ということなのですね。

 

いくら日本でスペイン料理がメジャーとなってきたとは言え、スペイン観光で疲れた後に日本料理、というのも、異国の文化を知る上で楽しいのかな、と思います。

では、次にバルセロナに帰ったら個人的に行きたい日本料理レストラン数件をご紹介しておきますね。ぜひのぞいて見てください。

 

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