スペイン語通訳・翻訳 スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国。
金沢市の北國外国語カレッジを中心に、スペインの生活とスペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでつながりながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとして、ますます活動の幅を広げていくべく、挑戦中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

スペインも、日本同様地域によって気候は変わります。

私が滞在したカタルーニャ地方、バルセロナは、地中海性気候で温暖。同じカタルーニャ地方でも内陸のリェリダに行けば、スキー場もあるし、霧も発生します。南のタラゴナ県と北のジローナ県との距離は 300 キロほど、もちろん気候も変わります。バルセロナ県にある Montseny 山(モンセンニ山)は頂上が 1700 メートルを超え、先日の寒波ではうっすらと雪が降りました。

あああ、寒い! こんな日は…!

バルセロナから 30 キロ北に離れたカルデデウ村 からの Montseny 山の眺め。 雪が寒々しい(2017年12月2日)

そんな冬に突入です。マドリードは内陸なので零下になるくらい寒くなり、バスク、ガリシアは雪が降り、はたまたアンダルシア地方、カナリアス諸島は半袖でも十分、という、一言で伝えられない国なのです。

 

スペインには無い日本の魅力、ということで、色々と書かせていただいていますが、このテーマでは今回 5 回目。毎日納豆と豆腐を満喫し、スーパーに行けば 298 円で新鮮なお刺身が楽しめ、コンビニでクーラーかけたまま車を停めておいても盗まれる心配もなく、という魅力を語ってきましたが、この時期の究極は、やはり銭湯・温泉でしょう!

27 年のスペイン滞在、というと、皆さん驚かれます。

自分でも、よく頑張ったな、と思います。なぜなら、スペインの文化は、シャワーの文化だからです。27 年間、毎日の入浴がシャワー、というのを考えてみてください。毎日シャワーです。これ、ちょっと考えちゃいませんか?  今の日本の友達の中で、「お風呂に入ると眠くなるので、シャワーがいいわ」という人がいるのですが、これってごくごく少数派?  日本にお住いの方々の生活から湯船に浸かる、というお風呂を取り除くことってできないのではないでしょうか?

これが温泉? 湖だが、温泉。不思議な感じ
バスタブにガラスの仕切りドアがついていて、 シャワーカーテンは不要に(写真中)。 5 人家族だと歯ブラシが多い

スペイン居住中に、数度の引越しをしましたが、バスタブ付きのアパートには 2 度住んだことがあります。最初のアパートの給湯はガスだったので、湯船にお湯を張ることができましたが、一つ難を言えば、洗い場がないため、溜めたお湯は一回きりで流さなければならず、不経済だということです。2 度目のアパートは旧市街のエレベーターなしの 5 階にあったため、水道ではなく、屋上の水タンクから各階に給水されるため、水圧が足りずシャワーさえ満足に浴びることができず、近所のスポーツジムに通ってシャワーを浴びたほどです。

そんな中、小旅行でホテルに泊まったりする度に、バスタブにお湯を張っての「お風呂」を楽しんでいたわけですが、最後 18 年住み続けたアパートにはシャワーしかありませんでした。それでも、当初はバスタブ付きのアパートに住む友人が数人いて、年に一度はバスタイムをお願いしたものです。ただ、その友達たちは、「年を重ねた家族が遊びに来ると、足が上がらなくて、バスタブに入るのさえ大変になるのよ」ということで、次々とリフォームをし、バスタブを取り除き、シャワーに移行していったのです。

バスタブ、ビデ、トイレの三種の神器。同じ部屋に集合

やっぱり、洗面所の横にバスタブが直接ある

息子二人とお風呂争いがあったため、バスタブを取り除き、 スペースを二つに割り、シャワールームを二つ、 隣り合わせに作った友達

さて、ここでスペインのお風呂事情をご紹介しましょう。ほとんどの場合、浴室はトイレ・ビデ、洗面台とが一緒になっています。バスタブがある場合でも同様です。ただ、日本のようにバスタブが床に埋め込まれているわけでなく、床の高さにバスタブが置かれた状態で設置されています。また、バスタブの外に排水溝がないため、洗い場もありません。そのため、バスタブに入り、そこでシャワーを浴びる、というスタイルになるのですね。シャワーの場合、シャワープレートが敷いてあり、そこにシャワーがついていて、昔はシャワーカーテンで仕切りを、現在は透明のガラスやプラスチックプレートで仕切りをするのが普通になっています。最近のホテルを想像してみてください。

小さいので全体が入らないわ、と送ってくれた バスルーム写真。この高さにバスタブがあると、 さすがにお歳を召すと入るのはきついかも?

トイレ、バス、洗面台が一つになった浴室には、ちょっとした難があります。誰かが使用している間は、他の人が使えない、ということです。そのために、大家族用の大きめのマンションやアパートには、バスルームとシャワールームが複数ある場合があります。また、その昔は住み込みのお手伝いさんを雇う習慣があったため、そのための小さなシャワールームが台所横の控えの間にあったりします。単に、バスとトイレと洗面台を別々に設置すれば、そんなに不便ではなくなるのにな、と思ったりしました。しかし、利点もあります。バスルームが脱衣所ともなるため、日本ほどヒートショックの問題を聞いたことがないことです。バスルームに暖房器具が置いてあるので、それ一つをシャワー前につければ、暖房は大丈夫、というわけです。

写真を撮った後、「浴室、明るすぎるわね」と、 日本に 2 度遊びに来た友達が分析。 サロンは間接照明で暗いのに、バスルームはなぜか明るい

そして、冒頭のテーマ、温泉ですが、スペインにもちゃんと存在します。特にわかりやすい地名があるのですが、カタルーニャ地方なら、「Caldes」と始まる地名は、ほとんど温泉地です。筆者がバルセロナに住み始めた 1988 年、語学学校で知り合った韓国人の友達と、バスに乗って行ったのが「Caldes de Mont Bui」という街です。

「総湯」というものはなかったと記憶していますが、この街の公営老人ホームにお風呂の設備があり、外来者にも貸してくれる、という情報で、行ってみました。バスは個室になっていて、脱衣所、洗い場、湯船が付いている日本様式のお風呂。ただ、違いは、お湯は自分で好きなだけ溜め、使った後は湯を抜いていく、というもの。

つまり、湯船でバスソープなどを使い、温まりながら体を洗う、という、ハリウッド映画で出てくるようなお風呂の入り方になるのです。その時の写真は残念ながら無いのですが、個室のお風呂、それも温泉、というのに感動し、しかし帰りのバスで湯冷めして、風邪をひいてしまったのを記憶しています。

2014 年、友人の結婚式でクエンカ近くの村に行った折に、スペインのアラゴン地方を探検することにしました。テント、シュラフ、ガスコンロ、鍋を積み、オートキャンプ場に滞在するのが好きなのですが、その旅行で行き着いたのが「Alhama de Aragón」という村の温泉です。8 月の半ば、というので、宿泊施設の温泉にはいかなかったのですが、その施設周辺の温泉湖で泳ぐことにしました。ヨーロッパで唯一という温泉湖、宿泊客は無料で楽しめるのですが、ビジターは有料。20€ ほどの使用料を払い、いざ!  湖の底などから温泉が湧き出ていて、だいたい 28 度に保たれているとのこと。その廻遊式の湖をプカプカと泳ぎ、写真を撮ってみました。海水浴ならず、湖水浴。

ヨーロッパ唯一の温泉湖。タニシに似た貝が生息していた。温泉だから、健康なのかな?

また、「スパ」と銘打った施設やホテルもあるし、スポーツジムにジャグジーがある場合もあり、日本の「温泉」に近いものは存在するのですが、ほとんどがが体温に近い温度でくつろぐという感じ。また、施設は男女別になっていないため、水着着用、ということになりますね。なので、たまに冬に帰国して、お風呂に浸かる、というのが日本滞在のメインだったですね。そして今、私にとってお風呂・温泉は何物にも代えがたいものとなっています。歩いて 3 分で温泉銭湯に行ける、という今の住まいに慣れてしまうと、「スペインに帰りたい病」もおさまるというもの。身を半分にちぎり、半分スペイン、半分日本、という生活、いつできるかしら?

寒さが厳しくなって来ました。スペインではこういう会話が増えてきます。

¡Qué frío hace! (ケ・フリオ・アセ!)「なんて寒いんでしょう!」

¡Abrígate bien! (アブリガテ・ビエン!)「暖かい格好でね!」

 

本年もお世話になりました。良いお年をお迎えください!