スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

6 月に入り、日本では衣替えだ、梅雨だ、という話になるのですが、スペインでは「夏だ!」となります。9 月に新学期が始まるスペインでは、6 月 23 日辺りで年度が終わり、子供達の待ちに待った夏休みに突入となるのです。毎日の時間割は、通っている学校や学年によって変わってきますが、通常土日・祝日はお休み、休日に学校行事があると、次の週以降に代休があったり、というのは日本の学校と似ています。ただ、飛び石連休はほとんど連休となるのはスペインらしいですよね。日本の「カレンダー通り」という登校はほぼあり得ません。

夏だ、お休みだ!

万国共通、夏は花火だ

良いのか、悪いのか、は別にしてですが。朝 8 時から授業が始まり 14 時まで帰宅しない集中型の学校もあれば、12 時半に 一度帰宅し、自宅で昼食後、14 時に再び学校に戻って、午後の授業、という学校もあります。公立か私立か、というのも関係しています。ただ、全部の子供達にとって同じなのが、夏休みの開始時期です。

夏の夜のお祭り、サン・フアン(サン・ジョアン)

日本では夏至の時期になりますが、スペインではやはり夏至「solsticio de verano」と呼び、夜が一番短いのが、6 月 21〜22 日頃ですね。キリスト教では、6 月 24 日が聖人フアンの日で、お祭りはその前夜に行われます。毎回お祭りのことを書くと、「スペインってお祭り好きなのかな?」と思われますが、日本だって、いつもどこかでお祭りがあるので、やっぱり人類はお祭りが大好きなのでしょう。今月は、本格的な夏が始まる、6 月 23 日、サン・フアン前夜祭について少しお話しします。先月は聖人ジョルディについてでしたが、今月は聖人フアン(カタルーニャ語ではジョアン)。日本の暦には六曜があったり、各日に意味があったりしますが、キリスト教の暦にはそれぞれの日に聖人の名前が付けられています。祝日前夜の 23 日は、町の中の交差点の真ん中などでは古い家具などが山積みにされ、火が放たれます。日本でいう左義長のような感じで、道路は一部通行止にされ、あたり一面煙が充満します。もちろん市の許可をもらった上での焚き火です。

夜通し花火で遊ぶ日。夜更かしは親も公認

また、6 月に入ると、町には花火販売の仮店舗や、小屋が店開きし、爆竹と花火が販売されます。この花火や爆竹が夜通し鳴り響くのが 23 日から 24 日にかけてで、夜通しお祭り騒ぎが続くのです。爆竹ではなく、ダイナマイトのような音も鳴り響きます。ですので、この夜、飼い犬には薬を処方し、このあまりにも大きな爆竹の音でストレスを生じさせないようにする飼い主もいるぐらいです。もちろん、人間も耳栓をして寝る、という対策が行われたりします。筆者は行ったことはないのですが(実は、爆竹の音が苦手)、海岸では持ち寄りでパーティーが開かれ、花火や爆竹、焚き火をして夜通し遊ぶ、という人が多々現れるのもこの夜で、警察の巡回も強化されます。ワインやビール、ジンやトニックの瓶が持ち込まれ、夜通しの飲み会。老いも若きも砂浜で遊ぶのです。24 日が祝日なため、早朝までどんちゃん騒ぎが続きます。

 

さて、この海岸での集い。これにはきちんと時間が決められていて、朝 6 時には警察が介入し、人々を海岸から出るように指示します。2016 年のデータでは、52000 人の人々が深夜の海岸で花火を楽しんだそうですが、その前年は 55000 人、2014 年は 60000 人だったとのことで、年々海岸でのパーティーのブームは下火になっているとのことです。人々が去った後には、清掃部隊が入り、海岸を綺麗にし、9 時には海水浴の人々が入れる状態になったそうです。去年は 308 人の清掃員と 15 台の清掃車が出動、ゴミの量は 16 トンだったとの記録を見つけました。もちろん救急隊、消防隊の出動回数も普通の日より多く、爆竹や花火で火傷をしたり、花火の日の引火で火事が起こったり、は想定内で、次の日の新聞を賑わせます。

テーブルや椅子を広場に出し、持ち寄りパーティーの始まり始まり〜

海岸に行く人ばかりではありません。出掛けずに家のテラスなどでパーティーをする人々が多数派です。23 日午後には、Coca de Sant Joan(カタルーニャ語ですが、コカ・デ・サン・ジョアン、サン・ファンのパン)を求め、パン屋には行列が出来ます。ほとんどの家庭がこのフルーツをちりばめたり、松の実をちりばめたりしたコカ(パン)を予約し、夜が一番短いサン・フアン前夜の夕食で食べるのが習慣です。

サン・ファンに欠かせないコカ

スペインの食事時間が他のヨーロッパの国々とは異なっている、という話はしたでしょうか?  夕食は大体 9 時から、というのが一般的ですが、この日の日の入りが 9 時 28 分なので、まだ明るい時間です。食前酒を飲み始め、夕食はだいたい 10 時から、ということになります。耳栓をしないと爆竹がうるさくて眠れない、ということになるので、この夕食も深夜までおしゃべり会となって続きます。筆者は夜更かしが苦手なので、だいたい2時がお開き。次の日は休日なので、ちょっぴり寝坊ができるのです。また、日本の日の出、4 時 36 分、とは違い、バルセロナのこの日の日の出は 6 時 19 分なので、この辺りから食事時間のズレが生じてくるのでしょうね。

 

そして、この日が終わると、子供達は長い長い夏期休暇となるのです。

 

子供達にとっては楽しい夏休み。約 3 ヶ月。ここで問題となるのは、大体の夫婦が共稼ぎなので、その夏休みの間、誰が子供の面倒をみるのか、です。学校が無くなるということは、生活時間のズレが生じ、子供の夜更かし、朝寝坊が定着してしまいますが、親の日常はそう変わるものではありません。そこで、登場するのが、おじいちゃん、おばあちゃんです。これは、日本でも言えることでしょうね。祖父母が遠くに住んでいたり、すでにいなかったりする家庭もありますよね。子守が好きな人もいれば、嫌いな人もいるわけで…。

夏の朝。すでにサン・アントニ・デ・カロンジャの海岸は人で賑わう

私の住んでいたアパートの大家のお母さんであるマリアさんには孫が 3 人いて、みんなが同じ建物にあるアパートに住んでいるので、おばあちゃんの家にはみんなが集まります。実を言う筆者も、バルセロナに行くと泊めてもらう家、マリアさんは私のバルセロナの母でもあるわけです。3 人の孫がまだ小さい時には学校の送り迎え、大きくなって自分で学校に行くようになると、今度は昼食の準備をし、それぞれの孫の時間に合わせて食事を出す、というのが日課となっています。こんなおばあちゃんが近くにいてくれたら、大助かりなのですが。

そんな、三ヶ月近い夏を楽しむのがスペインの子供達。

 

そういう筆者の子供の頃の夏休みですが、通常の 40 日という休暇から見て、1 週間ほど短いのが常でした。幼少時代に新潟の豪雪地帯に住んでいたので、冬の小正月の休みのために、夏休みが 1 週間ほど削られていたのです。子供の時にも、金沢の従姉妹たちの休みと比べて、新潟は少ないな、と思ったものです。その分、冬にお休みをもらっていたのですが、夏のお休みの方が魅力的ですよね。

子供の遊びも万国共通。カニかな? ヤドカリかな?

スペインに住んでいる時には、夏は最低 3 週間の連続した夏期休暇を取る、というのが法律で決められていたため、休みには事欠きませんでした。そして今、日本で仕事をする上で、この休暇を取る、という行為がいかに難しいか、ということも学びました。

「僕たちの自転車も、ちゃんと自転車置き場に置こうね」

日本では、休暇を「取ってやる」という人、休暇を「取らなきゃな」と思う人、何日休暇が「残っているかな」と自問する人、などなど、様々ですが、いずれにしても、スペイン人の視点でみると、日本人は休みが少ないです。

「まだ、本物の自転車には乗れないんだけれどね」

思い切って、休暇取ってみませんか?

筆者は、12 月にもスペインに里帰りします。有給か無給かって?  査定ですって?  その時に考えます。まだ半年先の話なので、人生、何が起こるかわからないもの。ストレスを軽減するための日課のジム通いは基本形。でも、好きなことをするための丸一日、丸 1 週間、って、重要ではないですか?

「成るように成る」です。

Sobre la marcha(ソブレ・ラ・マルチャ)。 直訳すると「行き当たりばったり」 かな。急がば回れ回れ。良い仕事をするためには、上質な休暇が必要なのです。だから、6 月から夏期休暇の話をしてみました。コラムをお読みのみなさんも、早速スペインを真似して、夏休みの予定を立ててくださいね!

 

 

さて、来月は何について話しましょうかね〜。

 

続きます。

 

¡Os deseo mucha suerte!

(あなたがたに大きな幸運がありますように! の意味)

長い休暇が取れると、ちょっと遠出もできる。道無き道を突っ走るのも醍醐味だ