2016/01/13 業界コラム 金子 成彦 大学が変わるべきところ守るべきもの(初詣編) 早稲田大学教授・東京大学名誉教授 金子 成彦 1972年 山口県立山口高等学校理数科1期卒 ...もっと見る 1972年 山口県立山口高等学校理数科1期卒 1976年 東京大学工学部機械工学科卒 1978年 東京大学大学院工学系研究科舶用機械工学科修士課程修了 1981年 東京大学大学院工学系研究科舶用機械工学科博士課程修了(工学博士) 同年 東京大学工学部舶用機械工学科講師 1982年 東京大学工学部舶用機械工学科助教授 1985年-1986年 マギル大学機械工学科客員助教授 1990年 東京大学工学部附属総合試験所機械方面研究室助教授 1993年 東京大学工学部舶用機械工学科助教授 1995年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻助教授 2003年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻教授 2018年 早稲田大学理工学術院創造理工学部客員教授 2019年 早稲田大学理工学術院国際理工学センター教授 2019年 東京大学名誉教授 2019年 日本機械学会名誉員 2020年 自動車技術会名誉会員 謹賀新年 今年の干支は申ですが、小生は母親から「申酉荒れて戌温し」と聞かされて育ってきましたので、今年は変化の始まりの年ではないかと予想しています。とはいえ、故事の通りに数年後には落ち着いて欲しいものだと思っています。 猿の狂言面(山口にて)山口大神宮に初詣まず、小生のお正月の過ごし方についてお話ししたいと思います。毎年、暮れに出身地の山口市にある実家の管理、墓参、お寺さんへのご挨拶を済ませ、新年には山口大神宮にお参りします。 山口政事堂表門(後ろは鴻ノ峰)NHK の大河ドラマ「花燃ゆ」をご覧になった方は記憶にあるかもしれませんが、毛利敬親候は幕末に萩から山口に拠点を移し山口政事堂を構えました。多くの志士たちが通った表門の向こうに山口大神宮はあります。 表門を抜けると程なく山口大神宮に到着します。この神社は、足利幕府の守護大名だった大内氏が構えた高嶺城の麓にあり、永正 5 年(1518 年)に大内義興(大内氏 30 代)が伊勢神宮から神霊を観請し、分社として創設されたもので、西のお伊勢さんと呼ばれて、江戸時代には多くの参拝客でにぎわったそうです。急な石段を上ると神楽殿に着きます。 山口大神宮神楽殿そして、神楽殿の横の石段を上がると山口大神宮の外宮と内宮が見えてきます。伊勢神宮にお参りされたことのある方には、これが伊勢神宮のミニチュア版であることがお分かり頂けるかと思います。 山口大神宮外宮 山口大神宮内宮 山口と大内文化さて、大内氏は、14 世紀の中頃から山口に本拠を置いていましたが、京都で応仁の乱がおこり、その兵火で京都が疲弊するのに対して、山口の町は平和で豊かでした。都から移り住む公卿や文化人などが多く、山口は西の京都といわれる程の繁栄を誇りました。 山口大神宮を創設した大内義興の時代には前将軍足利義植が京都を追われ、山口に来て大内氏に頼りましたが、義興は、永正 5 年(1508 年)6 月、これを奉じて上洛し、以後 11 年間、管領代として将軍に代わって室町幕府に関与しました。このほど、当時の大内氏の居館が復元されましたので、初詣の帰り道に立ち寄ってみました。現在は龍福寺という曹洞宗のお寺になっていますが、後世の改造部分を復旧して室町期当初の状態に復元することとなり、平成 18 年(2006 年)から約 6 年かけて工事が行われました。 修復後の龍福寺 大内義興の像 このように栄華を誇った大内氏ですが、天文 20 年(1551 年)、義隆(大内氏 31 代)が家臣の陶晴賢の謀反にあい、長門市湯本の大寧寺で自刃し、さらに、陶晴賢の擁立した義長(大内氏 32 代)が毛利氏に滅ぼされるに及び、その歴史は幕を閉じることになります。 戦略の重要性一方、毛利元就は、ご存知の通り、陶晴賢を天文 24 年(1555 年)厳島の戦いで破り、中国地方の覇者となりました。その後、毛利氏は江戸時代を生き延びて明治維新で活躍し、日本の近代化に貢献する人材を多数輩出します。東京大学工学部の前身である工部大学校設立を建議した山尾庸三もその一人です。 このように、戦国時代を生き抜けなかった大内氏と戦国時代を生き抜き日本の近代化にも貢献することとなった毛利氏という二つの大名家の影響が山口にはあります。両者の違いは、生き残り戦略であったと思っています。先の見通しが立てにくくなった今の日本にとって大学の果たす役割は大きく、変わるべき点もありますが、守るべきものもあります。 次回は、教育現場の視点から見た戦略の立て方についてお話ししたいと思います。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 早稲田大学教授・東京大学名誉教授 金子 成彦さんのその他の記事 2024/01/10 業界コラム あんたぁ先頭 ! 2023/01/11 業界コラム トランジェントな時代を生きる ( 4 ) 2022/01/12 業界コラム トランジェントな時代を生きる ( 3 ) 2021/01/12 業界コラム トランジェントな時代を生きる ( 2 ) 2020/01/08 業界コラム トランジェントな時代を生きる 2019/01/09 業界コラム 大学が変わるべきところ守るべきもの冬休み小旅行(ハウステンボス・湯田温泉編) 2018/01/10 業界コラム 大学が変わるべきところ守るべきもの冬休みの小旅行(京都・尾道編) 2017/02/07 業界コラム 大学が変わるべきところ守るべきもの(研究環境の来し方行く末) 2017/01/11 業界コラム 大学が変わるべきところ守るべきもの(冬休み小旅行編) 2016/02/09 業界コラム 大学が変わるべきところ守るべきもの(立春編) 2016/01/13 業界コラム 大学が変わるべきところ守るべきもの(初詣編) 2013/08/03 業界コラム 日本機械学会会長の経験を通じて (その3) 日英文化交流活動 2013/07/09 業界コラム 日本機械学会会長の経験を通じて (その2) アジア圏との国際交流活動 2013/06/11 業界コラム 日本機械学会会長の経験を通じて (その1) 東日本大震災対応 2010/11/09 業界コラム 産業と教育の現場から No.12 未来の研究開発リーダーに贈るメッセージ ~これからの学会との付き合い方~ 2010/10/05 業界コラム 産業の教育と現場から No.11 タフな学生を育てるためのコンテストの活用法 2010/09/07 業界コラム 産業の教育と現場から No.10 学部4年生のためのもう一つの発表会 2010/08/03 業界コラム 産業の教育と現場から No.9 留学生の慶事 2010/07/07 業界コラム 産業の教育と現場から No.8 産学官連携功労者表彰を通じて学んだもの 2010/06/08 業界コラム 産業の教育と現場から No.7 若手人材育成を意識した同窓会の活用法 2010/05/12 業界コラム 産業の教育と現場から No.6ホロニックエネルギーシステムの実現に向けて 2010/04/06 業界コラム 産業の教育と現場から No.5PBL教育を通じて日本のガラパゴス化を阻止しよう! 2010/03/02 業界コラム 産業の教育と現場から No.4 ゆとり世代ついに研究室に現る ! 2010/02/09 業界コラム 産業の教育と現場から No.3 就活学生に贈るメッセージ~エネルギー作物栽培の体験から~ 2010/01/13 業界コラム 産業の教育と現場から No.2 手料理コンパと工学教育 2009/12/01 業界コラム 産業の教育と現場から No.1メンテナンスの現場から学ぶべきもの 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月