スペイン語通訳・翻訳 スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国。
金沢市の北國外国語カレッジを中心に、スペインの生活とスペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでつながりながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとして、ますます活動の幅を広げていくべく、挑戦中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

ヨーロッパの日常は、映画で垣間見ることができますね。お買い物は青空マーケットで。紙袋からオレンジやリンゴが覗き見えていたりして。帰宅すると大理石のキッチンに買い物袋が置かれ、見回すと食洗機はほぼどんな家庭にも設置され、とても素敵ですよね。でも、意外な点が、日本の方が便利だったりします。

案外違う、日常生活

台所の排水口は、お風呂の排水口に 似ている。取り外しできるフィルターが 置かれるが、ゴミはたまらない

15 年ほど前、会社の同僚と話をしていると、「全く、日本人ってのは、なんて汚いんだ。信じられないよ」と呆れられたのです。ん? なんで? どういうこと? そして詳しく話を聞くことに。

住居にかかる賃貸料があまりにも高騰し、アパートに空き部屋があると、それを地方から出てくる学生や、社会人、外国人に貸す、というのが一般的な都会のバルセロナ。このジョルディという同僚は、アパートの一室を間貸しすることにしました。そこにやってきたのが、日本人の学生さんだったそうです。ある日、ジョルディが台所に行き、昼食を支度しようとすると、なんとシンクの水が流れず、どうも排水管が詰まっている様子だった、というのです。シンクの下の扉を開けて、バケツを用意し、その中の排水管を解体すると…。大量のスパゲティが出てきた、というのです。

「全然訳がわからないよ。スパゲティが余って、それを捨てるんなら、ゴミ箱に捨てれば良いものを、よりによって排水口に流すとは、なんてことだ。」

ううううん。私はわかってしまったのです。ですよね。

普通、日本のシンクには、ゴミを流しても、フィルターが付いていて、皿洗いの後、そのフィルターを外して、ゴミ箱にトントンとすれば、シンクの食べかすや野菜クズなどが処理できますよね。その日本人留学生は、バルセロナの台所もそういう仕組みだと思い、「あ、このフィルター口はとっても狭いなぁ。でも、ゴミはここに流せば良いんだろ」と思い込んでしまったのですね。そこで、ジョルディの批判が出てきてしまったのです。

こういうことって、それぞれの国の「常識」というものがあるものですが、暗黙のうちに、万国共通だ、と思ってしまい、なかなか説明ができないことってありますよね。その一つが、シンクに余ったスパゲティ流しちゃった事件。ジョルディにとって、日本人は「こんなとこにパスタ流して、日本人はなんて野蛮なんだ」というイメージが残っちゃったのは残念ですが。

ちなみに、私がバルセロナに住んでいた時の流し台には、取っ手付きの茶こし(少し小さめの取っ手付きザル)が常備されていて、この茶こしがごみ取りフィルターの代わりになっていました。今、日本に戻ってきて、流し台の排水口に筒型のフィルターが付いていることに、「ああ、なんて便利なんだろう」と思っているのです。

家の窓の外にシャワーカーテン?

もう一つの「常識の違い」は、洗濯物の干し方ですか?

日本ならば、「あ、雨だ! 洗濯物を取り込んで!」となります。無残に雨に濡れてしまった洗濯物は、再び洗濯機で洗われて、「はい、一から出直し」となりますが、スペインではあまり気にしないようです。「ま、また晴れれば乾くでしょ」というスタンスで、洗濯物が雨に濡れたまま干してあるのは、そんなに珍しい光景ではありません。また、濡れるのが嫌な人は、畳 1 畳ほどのビニールを洗濯物の上に掛け、雨をしのぐ、という方法をとります。雨に濡れた洗濯物をもう一度洗濯し直す、というケースは、あまり聞かなかったですね。

イエイエ、上の階の洗濯物の水滴や 埃がかからないようにするカバー

洗濯物を太陽にあてる干し方もあれば、内部の光取りのパティオに干されることもあります。アパートの内部パティオにある洗濯干し場は、上階から下階、同じ位置に用意されていることが多く、三階の住人の洗濯干しの下が、二階の住人のものになります。問題は、上階の住人の洗濯物の脱水度数。スペインの洗濯機の脱水は、日本のものに比べると若干ゆるい感じがします。また、絞りすぎるとシワになるからなのか、水が滴る洗濯物を干す人もいるぐらいです。ですから、下の階の住人は、上からの洗濯物の水が滴らないように、やはりシートをかぶせます。日本ならばベランダや庭に干す洗濯物も、住んでいる家の形状により、不可能になるのですね。

洗濯ロープに雫。ここに洗濯物を干す
上階の洗濯物がハタハタとはためく。 やはり天気がいいのが嬉しい

日本とスペインの違い、三年が過ぎ、もうそろそろネタ切れかと心配していましたが、案外出てくるものなんですね。これからも、「たかが、されど」のお話を続けていければな、と思っています。

¡Hasta el mes que viene!

(アスタ・エル・メス・ケ・ビエネ、では、また来月!)

11月になると、秋たけなわ。どんなお話ができるでしょうか?

では、スペインの洗濯干し場の写真をいくつかお楽しみください。

写真協力:
S. Nakamura、Salvador Barrau

ハンガーで干す、というのはあまりポピュラーではないスペイン。洗濯物の向こうに、フラッシュが尻尾を降っている